ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.694

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と三十五

「ノドモトスギレバ~ ナ レバー ト スパイス」②

 「でもね、スパイスも、その使い方次第で悪魔にもなり得る、ってことだけは忘れるべきじゃない」

 「悪魔にも、ですか」

 さすがに驚いてしまう。

 スパイスのイメージは、素材の良さを思う存分に引き出してくれる善玉の魔法使いだ。にもかかわらず、悪魔にも、とは。

 「たしかに、大袈裟かもしれないけれど、スパイスには、豚レバーの眠れる魂を呼び起こすだけのパワーが秘められている、とは思う。コレは間違いない。間違いないんだがな~」

 私が抱いているイメージに限りなく近い。なのに、ナゼ、悪魔にもなり得る、などと、Aくんは宣うのだろう。さらに一層ジワジワと、ナゾめいてくる。

 「クミン、ターメリック、グローブ、花椒(ホアジャオ)、などなどと、豚レバーとの相性がいいスパイスは数多くある。中でも僕のイチオシは、八角(ハッカク)」

 「はっ、八角、ですか」

 「そう。あの、スーパーチャイニーズスパイスである五香粉(ゴコウフン)の一翼を担う、八角

 「そんな、その八角でさえも悪魔になり得る、ということですか」

 「その可能性は、たとえ八角といえども、コトとシダイによっては充分にあり得る、ということだ」

 話を聞けば聞くほど、豚レバー、八角、悪魔、が、三つ巴にグルグルと、私の頭の中を回り出す。(つづく)