ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.360

はしご酒(4軒目) その百と十一

「ヨソトハチガウ ナニカ」②

 「熊野古道、ご存知か」、と、その口調を真似て、Aくんっぽく尋ねてみる。

 「知ってるよ、歩いたこともある」

 少し意外な気もしたが、Aくんの高野山への特別な思いを汲み入れれば、歩いたこともある、もまた必然、という気がしないでもない。

 「何箇所か歩かせてもらったけど、木立が美しい山道を、結構歩いたその先で、パ~ッと開けた千枚田、ホントに素晴らしかったんだよな~。涙が出そうになったよ」

 和歌山県の奥の深さを象徴する、それほどまでに魅力に満ちた熊野古道だということなのだろう。

 そんな、熊野古道が導く聖地、神様が降臨したという、私イチオシの大斉原(オオユノハラ)がある。ソコにはもう本殿も拝殿もナニもないけれど、大水害なんぞナニするものぞ、と、この今もなお、ヨソとは違うナニかを感じさせてくれる、そんなパワー溢れる空間なのだ。

 「あっ!」、と、突然、Aくん。

 たまたまなのか、ナニかがあるのか、は、わからないけれど、高野山から町石道(チョウイシミチ)を下った麓にも、大斉原から少し山側に歩いたところにも、乳房系聖地が鎮座していることを、いま思い出した、と宣う。

 「な、なんなんですか、その乳房系聖地って」、と、驚きと興味とが入り交じる私。

 「空海のお母さんゆかりの女人高野である慈尊院に、奉納される立体乳房絵馬。と、奇跡の天然乳房石(というか岩かな)の、ちちさま(ちごら石)。ま、騙されたと思って一度訪ねてみてよ。ヨソとは違うナニかを、きっと感じることができるから」

(つづく)