ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.665

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と六

「カタヨッテイル」②

 しばらくの間、いぶりがっこをアテに、放ったらかし熟成のわりには、かなりのクオリティを維持している、どころか、旨味度は断然グレードアップしているとしか思えないその酒を、チビチビとやる。

 そういえば以前、友人から譲り受けた、旬の終わりをその全身で感じさせているヨボヨボの大根やら人参やらを、適当な細さに切って、試しに一度干してみたことがある。天日干しというヤツだ。

 日に日に、ヨボヨボ感はカラッカラ感へと変貌を遂げ、一週間ほどで、すっかりパーフェクトなミイラと化した。

 ソイツを水で戻して、軽くサッとゴマ油で炒め、そして、一味(イチミ)を効かせたポン酢でコリコリッといただく。

 美味しかった~。

 その、絶妙にいい塩梅(アンバイ)、の、その味を、なぜか突然思い出す。

 よし、またやってみよう。

 と、決意も新たにしたまさにそのとき、Aくんが、「センターポジションが問題なんだよな」、と、抑え気味の雄叫びと共に突然の復活を遂げる。

 そのあまりにも突然な雄叫びに、身も心も、舌も頭も、バーチャルながら、あのときのあのお手製の切り干し大根まみれになっていた私は、食べてもいない切り干し大根を、ポンと口から飛ばしてしまいそうになる。(つづく)