ガッコ ノセンセ ノ オトモダチ vol.664

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と五

「カタヨッテイル」①

 マスメディアの姿勢が批判される際に、しばしば耳にするのが、「偏(カタヨ)っている」である。

 この「偏っている」という言葉、どうも私には、そう簡単に使えそうにない。それほど手強(ゴワ)く、扱いづらい。

 では、ドコにその手強さがあるのか、ドウ扱いづらいのか。残念ながら、ソコのあたりが随分と謎めいていて、よくわからないままでいる。

 その謎めいたベールを、どうにかして剥ぎ取りたくなった私は、ココはやはりAくんだろ、と、思い切って彼に助けを求めてみる。

 「よく、この新聞は、この放送局は、このTV番組は、このコメンテーターは、偏っている、というような批判を耳にしますが、その偏っている、の、その意味が、どうにもこうにもよくわからない。そもそもコレって、どういう意味なのですか」

 私の問い掛けのあまりの唐突さに、Aくんは、またまたそそくさと沈黙の扉を開けてしまう。(つづく)