ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.651

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九十二

「ヤッカイナル ヒョウリイッタイ」

 その本の表紙をボンヤリと眺めながら、「トビッきり重要なキーワードたちが、逆に、トビッきり厄介なモノになることもまた、充分にあり得ますよね」、と私。

 「そりゃ~、間違いなくあり得るだろ」、と、間髪入れずに、Aくん。

 あまりの即答ぶりに少々面喰らいつつも、同意してくれた嬉しさに気を良くした私は、さらにほんの少し体感温度を上げながら語りまくってみせる。

 「人間というものにとって欠かせない、極めて重要なモノたち、たとえば、個性、自由、表現、さらには、愛や正義といったモノのその裏側に潜む厄介さのために、いつだって私は、モヤモヤとしがちで。たとえば、一つ間違えれば、自由が、表現が、弱者を傷つけるという悪魔の心を生み落とし、愛が憎悪を、正義が争いを、生み落とす。という、そんなヘビー級の危惧が、私の中にはずっとあるのです」

 「僕にもあるよ、そのモヤモヤというヤツ。つまり、まさに、厄介なる表裏一体。そういったモノたちってのは、人間側に、人類側に、大きく委ねられている、ということなのだろうな」

 トビッきり重要なキーワードたちも、その有りようは、結局のところ、所詮、人間次第、人類次第、だということか。

(つづく)