ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.551

はしご酒(4軒目) その百と百と九十二

「プラスチック ハ ゼンゼン プラスジャナイ」①

 目に見えないものの恐ろしさ、の、時代だと思う、とAくん。

 目に見えないものの恐ろしさ、か~。

 本当の恐ろしさは、見えないところにこそ潜んでいる、と、私も思う。

 「わかるような気がします」

 そんな私の言葉など、サラリと何処かに置き去りにするかのように、Aくんは、その奥の、もう一つの扉を開く。

 「目に見えないもの、から、ナニを連想する?」

 「ん~、・・・、精神性とか、価値観とか、思想とか」

 それぐらいしか思い付かない。

 「そうだよな~、そんな感じだよな。でも、それだけじゃない」

 自分なりに、旧式で中古のマイコンピューターをフル稼働させながら、もう一歩、二歩、考えてみる。

 「ウイルスとか、細菌とか、といったものですか」

 「それもある。あるにはあるけれど、それらは、今に始まったことじゃない」

 言われてみればその通りである。

 古(イニシエ)より人類は、その手のモノに、翻弄され、振り回され、ながら、共存を余儀なくされてきたわけだから。

 「じゃ、放射能、とか」

 「放射能・・・。でも、ソレがもつ恐ろしさは、すでに周知されているわけだろう。そういう意味では、見えているモノ、と、言ってもいいかもしれない。全てわかった上で、その上で、背に腹は代えられぬ、と、致し方なしに、と、愚かにも、ソコから離れられないままでいるに過ぎない、ということだと、僕は思っている」

 その通りだ。

 となると、放射能よりも、むしろ、人類側の、その、短絡的で近視眼的な、ものの考え方のほうが、ウンと恐ろしい、ということになるのだろうな、きっと。

 などと、私なりに頑張って、アレやコレやと、もう一歩、二歩、考えてはみたものの、結局、暗礁に乗り上げる。

 すると、ほとんどギブアップ状態の私のほうに向かって、Aくんが開けたもう一つの扉の、奥の、そのまた奥から、その答えが、ヒタヒタと歩きながら近付いてくる。(つづく)