はしご酒(Aくんのアトリエ) その三十五
「アクマガキタリテ デンワヲカケル」①
「この今、この国に生きている者として、ホントに悲しいことだし、情けないことだと思うのですけど、善意の電話がかかってくることなんて、絶対にないと言い切っていいと、私は思っています」、と私。
「それ、なんとなくわかるような気がするよ。知人のお母さんも、マジで危うく、マンマと騙されるところだった、ようだし」、とAくん。
この国の、この星の、利便性の一翼を担(ニナ)ってきた「電話」に、犯罪の片棒を担(カツ)がせるなどというトンでもない悪行が後を絶たない状況が、スタンダードになって久しい。そして、そんなイヤなムードの中で、いつのまにか、ケータイも含めて、電話がかかってきたりすると、ギクッと不信感満載に、かなり身構えて受けて立つ、みたいなことになってしまっている自分がいることに、更なる情けなさを感じたりもしている。
「電話そのものには罪はないのだろうけれど、利便性を追求したツールの宿命と言えなくもないな」、と、ぼんのり致し方なし、という風情のAくん。
「おっしゃる通り、私も、電話に罪など微塵もないと思ってはいますが、それでもやはり、悪魔が来たりて電話を掛ける、電話は悪魔の囁(ササヤ)き、ぐらいに、思っていて丁度良くはないですか」
「そうだな、そうなのかもしれない。そうなのかもしれないけれど、なんだか、電話が、可愛そうになってくるんだよな~」
ナンとなしに二人して、そんな電話のことが、ズンズンと、不憫(フビン)に思えてくる。
「どうにかして電話に注がれた汚名を払拭してあげられるような、そんな術(スベ)って、ないものなのかね~」
結構本気で、電話の魂の尊厳を守るために、私たちにナニができるのだろう、と、暫し考えてみる。(つづく)