ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1012

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と四十三

カイジパトリオットミサイルマン!」

 「でもね、未だにパトリオットミサイルみたいな怪人たちは、漆黒の闇の中でその存在感を、不気味に、しかも、シッカリと、放ち続けているんだよな~」

 か、怪人、パトリオットミサイル、マン、・・・。

 想像しただけでもソラ恐ろしくなる。

 「どんな悲劇的な結末が待っていようと、そんなコトなどお構いなしに、ひたすら外に敵を見つけては撃墜したがる怪人たち。自ら手を下すことはしないが、またまた耳元で囁(ササヤ)くわけよ、唆(ソソノカ)すわけよ、『我が祖国のためにヤッチマエ~ヤッチマエ~』ってね」

 ん~。

 「そんなこんなの手口も含めて、コイツたち、結構、厄介なんだよな」

 た、たしかに厄介、厄介だと思う。

 なぜなら、パトリオットミサイルマンにはパトリオットミサイルマンなりの、ソレなりの「正義」ってヤツがあるはずだからである。正義は、時として視界を曇らせ、思考を硬直させる。硬直してしまった正義ほど厄介なモノはない。

 「怪人、パトリオットミサイルマン、恐るべし。ですね」

 「パトリオットミサイルマン、ね~。いいかもな、そのネーミング」

 褒められたわけではないのだろうけれど、なんだか嬉しくなる。

 「そういえば、たしか、『ミサイルマン・マミー』だったよな」

 ん?

 「久米みのる原作、一峰大二作画、の、ミサイルマン・マミー!」

 全くもってナンのコトやらサッパリわからない。

 「な、ナンなのですか、ソレ」

 「あれ?、知らないの?。1960年代であるにもかかわらず、様々な気象トラブルに着目して誕生した無敵の気象改造用ロボット、ミサイルマン・マミー」

 「全く存じ上げませんが、なんだかモノ凄いコンセプトの中で誕生したスーパーヒーローのようですね」

 「そう、そうなんだよな~。力付くで悪いヤツらをボコボコにやっつける、みたいな、そんなヒーローものが全盛であったあの頃、そうした気象やら自然やらには誰も着目なんかしなかった。にもかかわらず、突如、颯爽と誕生したミサイルマン・マミーは、幼き僕にとっても、妙に興味深いスペッシャルなヒーローの一人であったわけだ」

 なるほど。

 全く存じ上げないミサイルマン・マミーなれど、なんとなく、怪人パトリオットミサイルマンの真逆に鎮座するスーパーヒーローであるように思えてくる。

 「ただし」

 んん?

 「ただし、この話には、いかにもあの時代らしいオチがへばり付いている」

 あの時代らしい、オチ?

 「無敵の気象改造用ロボット、ミサイルマン・マミーの動力源。ソレが、当時、紛れもなく全人類にとっての夢のエネルギーであった、そう誰もが信じて疑わなかった、あの」

 あっ、あ~。

 「まさか、まさかの、あの、原子力、ですか」

 「ピンポ~ン。そう、あの原子力であったわけよ」

 原子力、か~。

 しかし、驚くことではないのかもしれない。この私でさえ、あの事故が起きるまでは、安心安全のクリーンエネルギーの最先端だと信じて疑わなかったわけだから。

 「原子力を動力源にして世界中の気象や自然のトラブルの解消のために日々奮闘する。なんだか、この社会の矛盾を象徴的に浮き彫りにしているように思えないかい」

 この社会の、矛盾を、か~。

 「つまり、社会の矛盾の上に成り立つ、正義。ということですね」

 「そう、そういうことだ。怪人パトリオットミサイルマンが、未だにその存在感をシッカリと放ち続けておれるのは、そうした社会の中の愚かなる矛盾が、消えそうで消えない、消そうとしても消せない、からなんだろうな、きっと」

 辛く、やるせなく、情けなく、なってくるほど、Aくんの、その指摘通りだと、ズシッと、ズシッと思えてくる。(つづく)