ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.592

はしご酒(Aくんのアトリエ) その三十三

「タイセツニシナケレバナラナイモノ ト キョウイク ト」①

 この世の中には、大切にしなければならないものが、横一列にズラリと数多(アマタ)ある、とAくん。

 「横一列にズラリと、ですか」、と私。

 「ん~、・・・、横一列にズラリと、というよりは、ナニが本当に大切なものか、は、人それぞれ違う、かな」

 人それぞれ、違う、・・・。

 ほとんど納得できるものの、なぜか、僅(ワズ)かに違和感を抱いてしまう。

 「それは、人は、結局、自分本位、どこまでもエゴイスティックである、ということですか」

 少し飛躍気味かとも思いはしたが、ここは思い切って、と、突っ込んでみる。

 「その、大切なものが、極悪なものでないのなら、僕は、人それぞれ、大切なもの、大切にしたいもの、は、違っていいと思っている」、と、私の突っ込みに正面から受けて立つ、Aくん。

 「でも、本当に大切にしなければならないものは、人類共通のものでなければならないのではないですか。そうでなければ、たとえば、喫緊の課題でもある環境問題から見えてくるような、そんな、この星の未来にとって、本当に大切にしなければならないものを、守ることなんて、到底、できやしない、と、思うんです」、と、食い下がってみる、私。

 するとAくん、「その、本当に大切にしなければならないものを、シモジモじゃない圧倒的に権力を握るエライ人たちが、見誤ることがある、戦略的にでっち上げてしまうことがある。という、そんな危惧が僕にはあるものだから、大切にしなければならないものの、国家的な一本化みたいなものに対して、底知れぬ不気味さを感じてしまうんだ」、と、トドメを刺してくる。

 マズい、ヤヤこしくなってきた。

 ナニやら相容れそうにない二つのことが、睨み合いながら平行して走っているような、感じだ。(つづく)