ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.584

はしご酒(Aくんのアトリエ) そのニ十五

「アイシュウノ ツチダンゴ」②

 その小さな神社の、小さな拝殿。そこから格子越しに小さな本殿が見える。

 手元に目をやる。

 ん?

 なんだ、これは。

 四角い小皿に、黄土色の丸いものが10個余り盛られている。

 ん!

 土団子、土団子だ。

 その土団子が盛られた四角い小皿が数枚、そこに、置かれている。 

 どうだい、ワクワク感が止まらなくは、ないかい?

 「ワクワク感、止まらないです」、と、スッカリ頭の中のほとんどが、土団子になりつつある私。

 「もう、先ほどから、ズンズンがワンワンとうるさく吠えて、タイヘンです」

 「ズンズンがワンワン?」

 「あ、あ~、いまのソレ、忘れてください」

 そして、謎に包まれた土団子のその話は、一気に江戸時代にまで遡(サカノボ)る。

 「江戸の頃だと思うんだ。当時の、いわゆる風俗だな。そこで働く女性たちは、どうしても、病魔に冒されるその危険性と、常に隣り合わせであったのだろう。けれど、だからといって大っぴらにはできない。客がつかなくなるからな。だから、人知れず訪れたんだと思うんだよな~、あの神社に」

 「そ、そうなんですか」

 講釈師、見てきたような嘘をつき、などという言葉があったりするけれど、まさにそんな感じにユルリユルリと、語り続けるAくんに、さらに一層、の、そのまたもう一層、私の中のズンズンが、ズルリズルリと引き込まれてしまう。(つづく)