はしご酒(Aくんのアトリエ) そのニ十五
「アイシュウノ ツチダンゴ」②
その小さな神社の、小さな拝殿。そこから格子越しに小さな本殿が見える。
手元に目をやる。
ん?
なんだ、これは。
四角い小皿に、黄土色の丸いものが10個余り盛られている。
ん!
土団子、土団子だ。
その土団子が盛られた四角い小皿が数枚、そこに、置かれている。
どうだい、ワクワク感が止まらなくは、ないかい?
「ワクワク感、止まらないです」、と、スッカリ頭の中のほとんどが、土団子になりつつある私。
「もう、先ほどから、ズンズンがワンワンとうるさく吠えて、タイヘンです」
「ズンズンがワンワン?」
「あ、あ~、いまのソレ、忘れてください」
そして、謎に包まれた土団子のその話は、一気に江戸時代にまで遡(サカノボ)る。
「江戸の頃だと思うんだ。当時の、いわゆる風俗だな。そこで働く女性たちは、どうしても、病魔に冒されるその危険性と、常に隣り合わせであったのだろう。けれど、だからといって大っぴらにはできない。客がつかなくなるからな。だから、人知れず訪れたんだと思うんだよな~、あの神社に」
「そ、そうなんですか」
講釈師、見てきたような嘘をつき、などという言葉があったりするけれど、まさにそんな感じにユルリユルリと、語り続けるAくんに、さらに一層、の、そのまたもう一層、私の中のズンズンが、ズルリズルリと引き込まれてしまう。(つづく)