ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.480

はしご酒(4軒目) その百と百と二十一

「アイシュウ ノ ペンフレンド モノガタリ」②

 「ナニか、あったのですか」

 「ナニかが、あったのだろうな。若気の至りで、つまらないナニかを、偉そうに宣ってしまったのかもしれない。けれど、そのナニかがナニなのか、全く思い出せないんだ」

 「都合の悪いことは、オートマチックに忘却の彼方へ、という、自己防衛本能、ってヤツですか」

 「そうだと思う。きっとそうだろう。だから余計に、申し訳ないという気持ちで溢れ返り、懐かしのペンフレンドの、その記憶に、いつだって暗い影がさしてくる」

 酒のせいもあるのだろうが、Aくんの目が、少し潤んでいるようにも見える。

 「でも、ステキな思い出じゃないですか。羨ましいですよ、ホントに」

 思えば、この年齢になって、ようやく、やっと、ユルリと大らかに、モノゴトと向かい合えるようになってきたような気がするし、考えることができるようにも、なってきたような気がする。そんな、ナンとも頼りない過去の自分であったがゆえに、多くのすれ違いや別れを生んできたのだろう、と、今となっては素直に思える。おそらくAくんも、そんな感じなのかもしれない。

 Aくんにとっての、哀愁のペンフレンド物語、は、ほろ苦いスパイスが、パラリパラリと振り掛けられた、そんな、心にピリリと沁み入る物語であるようだ。(つづく)