はしご酒(Aくんのアトリエ) その十二
「ヤラセテモロテマス」①
京都ならではの独特な言い回しなのか、それとも、大阪は船場の商(アキナ)い言葉なのか、そのあたりのことは、残念ながら、僕にはわからないけれど、商いでもナンでも、ナニかをする、というそのトキに、あえて、謙(ヘリクダ)って、やらせてもろてます、と、言ってのけるところに、ナンとも理屈抜きに気持ちの良さを感じてしまうんだよな、と、一気に、捲(マク)し立てるAくん。
「させていただいております、って、ことだと思うけれど、いったい、それって、誰に向けての、させていただいております、なんだろう」、と、なんとなく気になったことをブツブツと呟くように独り言(ゴ)ちる、私。
そんな私にAくんは、「もちろん、お客さんにだろ。と、なんの疑問ももたずに、そう言いたいところだけれど、でも、この、やらせてもろてます、は、もっと別のナニかに向けてのものであるような、そんな気がしてならないんだな、僕は」、と。
Aくんのその言葉に、更に一層、じゃ、誰に?、という思いがプクプクと膨らんでくる。しかしながら、その思いをググッと堪(コラ)えて、まずは自分なりにジジッと考えてみる。
やらせてもろてます
気張らせてもろてます
頑張らせてもろてます
ありがとさん
ありがとさん?
・・・
・・・
目に見えない大きなナニか、たとえば、神さまのような、そんな、超越した、絶対的な、ナニか、に、向けて、謙虚に、一歩下がって、感謝の気持ちを込めて、の、やらせてもろてます、じゃないのか、って、いま、フッと思ったりする。
するとAくん、「神さん、に、かもしれないな~」、と。
鳥肌が立つ。
「わ、私も、全く同じことを思っていたんです。驚いたな~」
「ほ~」、と、Aくんもまた驚きの表情をチロリと見せつつ、彼なりの、「やらせてもろてます、は、神さんに」論、を、ユルリと展開する。(つづく)