ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.571

はしご酒(Aくんのアトリエ) その十二

「ヤラセテモロテマス」①

 京都ならではの独特な言い回しなのか、それとも、大阪は船場の商(アキナ)い言葉なのか、そのあたりのことは、残念ながら、僕にはわからないけれど、商いでもナンでも、ナニかをする、というそのトキに、あえて、謙(ヘリクダ)って、やらせてもろてます、と、言ってのけるところに、ナンとも理屈抜きに気持ちの良さを感じてしまうんだよな、と、一気に、捲(マク)し立てるAくん。

 「させていただいております、って、ことだと思うけれど、いったい、それって、誰に向けての、させていただいております、なんだろう」、と、なんとなく気になったことをブツブツと呟くように独り言(ゴ)ちる、私。

 そんな私にAくんは、「もちろん、お客さんにだろ。と、なんの疑問ももたずに、そう言いたいところだけれど、でも、この、やらせてもろてます、は、もっと別のナニかに向けてのものであるような、そんな気がしてならないんだな、僕は」、と。

 Aくんのその言葉に、更に一層、じゃ、誰に?、という思いがプクプクと膨らんでくる。しかしながら、その思いをググッと堪(コラ)えて、まずは自分なりにジジッと考えてみる。

 

 やらせてもろてます

 気張らせてもろてます

 頑張らせてもろてます

 ありがとさん

 ありがとさん?

 ・・・

 ・・・

 

 目に見えない大きなナニか、たとえば、神さまのような、そんな、超越した、絶対的な、ナニか、に、向けて、謙虚に、一歩下がって、感謝の気持ちを込めて、の、やらせてもろてます、じゃないのか、って、いま、フッと思ったりする。

 するとAくん、「神さん、に、かもしれないな~」、と。

 鳥肌が立つ。

 「わ、私も、全く同じことを思っていたんです。驚いたな~」

 「ほ~」、と、Aくんもまた驚きの表情をチロリと見せつつ、彼なりの、「やらせてもろてます、は、神さんに」論、を、ユルリと展開する。(つづく)