ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.549

はしご酒(4軒目) その百と百と九十

「キトクケンエキ ダハ?」

 まことしやかに囁かれている、重厚な漢字が6個も勇ましく並ぶ「既得権益打破」。コイツが、なかなか怪しい、と、毎度のことながら疑い深いAくん。

 権力を握る者がナニかに手を付けようとするとき、それを成し遂げるための幾つかの戦略的ツールというものがあるらしく、この「既得権益打破」は、その中でも指折りの一つである、らしい。

 「そもそも、既得権益、って、ナンなのですか」、と私。

 「そうだな~、・・・、お金も権利も独り占め、よそ者がチャチャを入れる隙間など、微塵もありませんぜ~、って、感じかな~」、とAくん。

 「なんか、凄いですね」

 「そう、凄いんだ。おそらく、当時の政治関係者たちを抱き込みながら、獲得していったのだろうな」

 「癒着、ってヤツですか」

 「ま、政治と経済なんてものは、癒着に始まり癒着に終わる、てなものだから」

 「ナニやら犯罪の臭いさえ、してきますね」

 「ま、そこはプロだから、上手いことやるわけさ、アレやコレやと巧みな技を駆使しつつ・・・」

 「強者たちは、いつの世も、ガッチリと手を組んで、合法的な悪事を企む・・・、なんだか、まるで、越後屋、お主も悪よの~、の世界じゃないですか」

 「上手い!」

 どきどきAくんは、「上手い!」、と、誉めてくれるのだけれど、毎回、素直に、手放しに、喜ぶことができない。それほど、ソコにある闇は、手をつけられないほど、深い、深すぎる、ということなのだろう。

 「それでも、百歩譲って、既得権益が打破されるわけですから、それはそれでいいんじゃないですか」、と、無理やり、闇の中に差し込む一筋の光明に期待するかのように、Aくんにモノ申してみる。

 するとAくん、またしても、全て想定内とでも言いたげなほどに、落ち着いたまま、ユルリと、「既得権益打破は、また、新たなる既得権益を生み落とす、が、必定。政治なるものに関わる者が、そんな易々と既得権益打破、など、と、宣うこと自体、笑止千万。おまけにナニやら姑息なナニかが、その裏側に潜んでいそうで、とにかく、怪しい怪しい、ということだ」、と。

(つづく)