ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.565

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六

「キニナッテシカタガナイ ヨムヒトモンダイ」③

 「ナニがナンでも突っ込まれたくない症候群、ってヤツかもしれない」

 「えっ!?」

 「変に突っ込まれてごらんよ。場合によっては、したくもない訂正やら謝罪やらを強要させられたりなんかして、邪魔臭いったらありゃしない。と、なると、そう易々とは自分の言葉で語るわけにはいかない、ということになるわけだ」

 などと、ボ~ッと聞いていたら読む人側の肩をもつようにも受け取れるコメントを、Aくんが、し始めたものだから、少し当惑する。

 「それもまた、保身、ですか」

 「不安定な権力者だという自覚が、あるのかもしれない。不安定ゆえに、ナニかに怯えている」

 「ナニかに、ですか」

 「そう。それがナニかは、僕にはわからかいけれど、基礎工事をいい加減にしたものだから、どうしても、ドンと構えた安定感がない」

 「き、基礎工事をいい加減に、ですか」

 「建造物も人間も、基礎工事を怠ると、その上が、いくら立派そうに見えても、所詮、ナンともカンともだ、ということだ、な」

 いつもながらの、Aくん特有のわかりにくさはあるものの、なるほど、「ヨムヒト問題」は、そっくりそのまま、「基礎工事いい加減問題」なのか、と、思いのほかズッド~ンと、腑に落ちてしまう。(つづく)