ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.563

はしご酒(Aくんのアトリエ) その四

「キニナッテシカタガナイ ヨムヒトモンダイ」①

 このところ、私なりに、どうも気になって仕方がないことがある。そのことを、突然、思い出す。

 ひと、ヒト、・・・人。

 そう、「人」である。

 たとえば、ポーズに少し無理があると言われているあの有名なロダンの彫刻は、考える人。で、ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』は、アルカイックスマイルの微笑む人。一方、ナゼか引き込まれるあの緒形拳主演の『ミラーを拭く男』では、当然、拭く人。で、トム・マッカーシー監督作品の『THE VISITOR』は、扉をたたく人、だ。そして、トドメは、森進一の名曲、♪わるいひと。と、くる。もちろん、トドメといってもこの世の中は、ソレら以外のもっともっと様々な「ひと、ヒト、人」で溢れているわけだけれど。

 わけなのだけれど、ココにきて、数年前から気にはなっていた、国会などを主な活動場所としているある「人」のコトが、更に一層、気になって気になって仕方がない、のである。

 それが、噂の、「読む人(ヨムヒト)」である。

 その読む人が、このところ、一気に増殖傾向にある、と、いう。

 なぜ、それほどまでに読むのか。その謎は深まるばかりなのだけれど、とにかく、読んで読んで読みまくる。まさか、読みたいお年頃、というわけでもあるまい。おそらく、読まなければならないナニかが、ソコにあるのだろう。そのナニかが、心底、気になって気になって仕方がないのである。

 「強大な権力を握った途端に、自分の言葉ではなく、ひたすら読む、読みまくってしまう、という人たちが、増えてきているように思えて仕方がないのですが」、と私。

 「いわゆる、ヨムヒト問題、ってヤツだな」、とAくん。

 「へ~、そういうふうに言われているのですか」、と私。

 「いや、僕が、勝手に、そう呼んでいるだけ」、とAくん。

 へっ!?

 少し、ガクッとはきたものの、なぜか、ナンとなく気に入ってしまう。ナニやら妙にシックリとくる。

 ヨムヒト問題、いい響きだ。

 「その、ヨムヒト問題、の、その、要因みたいなモノ、って、いったい、ナンだと思いますか」

 「ナンだろうな~」

 そう呟くと、またまたAくん、プッツリ、そのまま黙りこくってしまう。

(つづく)

 

 

 

追記

 にちり~ん、にちり~ん。

 あの、JR九州の特急「にちりん」。ではなくて、岡部耕大が主宰する劇団「空間演技」の『日輪』。友人のお兄さんである尼子狂児の他に、たしか、若き日の大竹まことがゲスト出演されていたような、いなかったような・・・。

 アングラ(アンダーグラウンド芸術)が、暗闇の中で、不気味に気持ち良く、光り輝いていた時代の、記憶。