ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1080

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と十一

「ジジツハ アリマセン シカシ カノウセイハ ヒテイデキマセン」

 「事実はありません。しかし、可能性は否定できません」

 ん?

 「たとえば原発の、あのトンでもない事故が起こる前に、その原発の安全性について、地元住民が、電力会社に、『たしかに、今まで、事故が起こったという事実はないかもしれませんよ。でも、今後、取り返しがつかないような事故が起こってしまう可能性は否定できないわけでしょ』、と、いうのなら、大いに理解も共感もできるけれど、しかし、個人の、あるいは、故人の、その命の、魂の、尊厳に、大きく関わってくるようなコトに対して、ナンの根拠もないにもかかわらず、そのような言葉を安易に投げ掛ける、投げ掛けてしまう、その軽薄さ、傲慢さに、憤りを禁じ得ないわけよ、僕は」

 んん?

 「たとえば、セカンドレイプ

 んんん?

 「圧倒的な被害者に対して、ナニも知らない、ナニも知るわけがない、第三者が、『被害者にもナンらかの責任がある、という可能性も否定できないわけですよね』と宣うのと、極めて似ているような気がするんだよな」

 あ、あ~。

 おそらく、あのコトだ、間違いない。

 「仮にも、責任ある立場であり、その影響力も甚大な立場の人間が、公の場で、個人の、あるいは、故人の、さらには、その家族の、魂を抉(エグ)るような発言を、単なる身勝手な推測だけで行ってしまう、なんて、けっして許されることではないでしょう」

 「そう、許されることじゃない。でもね、そうした意見、考えも、一部の強烈な支持を得る」

 強烈な支持を得る、か~。

 多種多様な意見や考えがあっていいわけだから、当然、そういうことも起こり得るとは思う。起こり得るとは思うけれど、だからといって、時と場合によっては圧倒的な弱者を理不尽に攻撃することもまた正義、ということにはならない。人として、ソンなことは、絶対にあってはならない。

 「万が一にも、自分を支持する一部の人たちの理不尽な要望に応えるために、圧倒的な社会的弱者にトドメの鉄槌を食らわす、などというコトがあるとするなら、言葉は不適切かもしれませんが、あえて、あえて怒りをフルに込めて言いたいです。『この、ひとでなし!』と」

(つづく)