ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.545

はしご酒(4軒目) その百と百と八十六

「ジョウザイキン ト アイジョウ トガ パワーヲ アタエテイル」(アル ジョユウサン)

 ある女優さんが、「料理、毎日、されているんですか」、と、尋ねられたときに、笑顔でサラリと、こう答えたんだよね、とAくん。

 

 私のこの手に付着している常在箘と、そして愛情とが、食べ物にパワーを与えている、と、信じているので、料理は、私がします

 

 その女優さんの、そのときの、その言葉が、好きなんだ、と言う。

 「なんか凄いですね。常在箘、と、愛情」、と私。

 「そう、常在箘と愛情。そうした、科学的なモノと精神的なモノとのコラボレーション、みたいな、そんな感じ、大事なコトだとも思っている」

 「コ、コラボレーション、ですか」

 「そう、コラボレーション。僕の頭の中の構造が、全くもって理系ではないので、どうしても精神的なモノに傾倒しがちなんだけれど、でも、両者が、お互いを尊重しつつ、いい形のタッグを組むことができてさえいれば、それはそれでやはり、この国にとっても、この星にとっても、きっと、意味のあることだと思う」

 たしかに、そういう気はする。気はするが、ナニかが、ドコかが、引っ掛かる。

 「でも、その、いい形のタッグを組む、が、難しいからこそ、科学は、時として暴走してきたのではないのですか」

 言いたいことが、キチッと、まとまっているわけではいないし、ちょっとケンカごしだし、なのだけれど、そのままAくんにぶつけてみる。

 するとAくんは、そうした私の問い掛けも想定内と言わんばかりに、よりトーンもボリュームも抑え気味に、ユルリと答える。

 「君の言う通りだ。だからこそ、尚のこと、その女優さんの、その、実にいい塩梅の言葉が、シックリと、僕の五臓六腑に沁み入ってきたのかもしれないな」

(つづく)