はしご酒(4軒目) その百と百と五十五
「シャカイ ノ ムジュン パラダイス」②
「不気味に、パックリと口を開けた落とし穴と同じぐらい深い、その、罪の深さとは、いったい、なんなのですか」、と私。
するとAくん、私の方に顔を向けると、静かに、ユルリと、その問い掛けに答える。
「一つ間違えると、分断を呼ぶ、ということだ」
「ぶ、分断を、ですか」
「そう。ある一方にとっては、有難かったり、都合が良かったりするわけだから、ソレを良し、と、思えないもう一方との、その狭間の溝は、一層の深みを増す」
分断。なるほど、今回は、珍しく、ある程度、最初からスルッと理解できる。ただ、それと同時に、ある一方と、そのもう一方と、さらには、その他の一方たちの全てが、良し、と、思えるような、そんなものって、はたして、あり得るのだろうか、という疑問もまた湧き上がる。
それでも、なんらかの手は打たなければならない。しかも、時間もない。となると、本意ではないけれど、トンでもないことが起こってしまった状況下では、少々の矛盾も整合性の無さも、致し方ないか、と、この私でも、おもわず思ってしまう。
「やっぱり、仕方ないんじゃないですか」
「君でもそう思うんだからな~。それにゆえに、とかくこの世は、社会の矛盾パラダイス。社会の矛盾を、整合性の無さを、冷静に問題視する、などということは、所詮、余裕があるときの戯言(タワゴト)に過ぎない、というコトなのだろう」
そんな言われ方をしてしまうと、逆に、でもやっぱり、そうじゃないだろ、そうであってはいけないだろ、などと、思えてきたりしてしまうものだから、なんとも不思議な気持ちになる。そんな気持ちになってしまった私は、一気にハンドルを切る。そして、その考えを、修正する。
たしかに難しいことなのかもしれない。私も、そう思う。そうは思うが、そう易々と、分断を引き起こさない努力を、放棄すべきではない、放棄してはいけない、という、もう一方の思いが、猛スピードで膨らむ。
そんな、社会の矛盾パラダイスに、その未来に、いかなる理由があろうとも、おそらく神さまは、微笑んではくれない、ような気がする。(つづく)