ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.472

はしご酒(4軒目) その百と百と十三

「キョウゾントイウナ ノ カクゴ」②

 するとAくん、「その覚悟は、死、さえも、ということ?」、と、さらにズシンと問うてくる。

 死、さえも・・・、か~。

 その一文字に、さすがに怯(ヒル)む。

 自分のことならまだしも、誰かにとっての大切な、命、さえも、覚悟しなければならないとなると、その覚悟はズンズンと、さらに一層重いものになる。ましてや、つい今しがた、なんやかんやと言っても、やっぱり、命、いの一番!、と、声高らかに宣言したばかりなのだ。そのことも手伝って、どうしても怯みに怯むのである。

 そんな怯みに怯んだ私にAくんは、ユルリと語り掛ける。

 「そう簡単には覚悟なんてできやしない、ということだ。それほどヘビーでハードなものだから、横文字で、ウイズなんちゃらなどと、ライトにソフトに、ベールで包み込んで煙 (ケム)に巻こうとする。そして、人々の心の中の緊張感も、熟考する姿勢も、覚悟も、ジュルジュルと溶けて流れ出ていくのだろうな、きっと」

 珍しく、自信満々に、「そうです!」、と、ビシッと言ってはみたものの、Aくんの話を聞けば聞くほど、深く考えれば考えるほど、ソコに命が大きく関わってくるだけに、そんな、ヘビーでハードな共存という名の覚悟、など、私ごときには、到底、もてそうにないと思えてきて、胃袋の上のほうが、ズンと重くなる。(つづく)