はしご酒(4軒目) その百と百と五十一
「オテガル ハ ダレニトッテモ オテガル シンドローム」①
ナニを思ったのか、Aくん、突然、クレジットカードの話をし始める。
若いときに、ほんの数回、クレジットの返済が滞ったことがある。元来いい加減な性格ゆえ、口座に入金することを忘れがちな私は、そんなことを数回繰り返しているうちに、クレジットカードというものをもてなくなる。公務員でもある学校の先生でも、もてなくなるんだ、などと、思ったりもしたが、ま、カードなどなくとも、全くもって、どうってことはなかった、と、あの頃を振り替えるAくんの話は、まだ少し、続く。
数年が過ぎ、あることで銀行を訪れた日のこと。
すると、銀行員らしきおじさんが、温厚そうな笑顔を振り撒きながら近付いて来る。
「カード、おもちですか、おつくりしましょうか」
「何回か滞ったので、つくれないと思いますけど」
「大丈夫ですよ」
「は~?、しかも、いま、無職ですし」
「問題ありません」
その頃、ちょうど、アーティスト、画家、を、夢見て、無謀にも一回めの離職を敢行した直後であった私は、随分と面食らったことを、今でも覚えている。もちろん、そのときは、丁重にお断りさせて頂いた。
今、考えてみると、ひょっとしたら、あのときに、世の中のナニかがユルユルになったのだろうな、と、語りつつAくんは、ナンとも怪しげな笑みを、ウッスラと浮かべる。(つづく)