ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.443

はしご酒(4軒目) その百と八十四

「モノノミエカタ ガ カワル」①

 ダレかと出会って、ナニかと出会って、アルことを耳にしたり、目(マ)の当たりにしたり、さらには、アンナことをやってみたり、やらかしてしまったり、しているうちに、少し、今までとはモノの見え方が変わってくる、違ってくる、みたいなことってないですか、と、Aくんに尋ねてみる。

 間髪入れず、Aくん。

 「あるだろう、それは、間違いなく、ある」

 負けじと、間髪入れず、私。

 「あるでしょう、ありますよね、そういうことって」

 一気にホッとする。

 「見えなかったモノが、見逃していたものが、見えてくるって感じ、もちろん、悪いことじゃ、ない」

 さらにホッとする。

 「教育の原点のような気もする。学ぶ、とは、まさに、そういうことだろう」

 何気なくAくんに尋ねたことが、ドーンと肯定されたものだから、ホッと、どころか、嬉しくて、心の内側までジンワリと熱くなる。

 「ただし、・・・」

 「えっ」

 「ただし、モノの見え方が変わることのそのベクトルは、必ずしも、同じ方向を向いてはいないんだな」

 そもそも、ベクトルの意味さえ、よくわかってはいないのだ。Aくんが言わんとすることのそのあたり、ほんの数秒前まで、あれほど晴れ渡り、視界もスッキリとしていたのに、猛スピードで、またまた深い霧が立ち込め始める。(つづく)