はしご酒(4軒目) その百と八十四
「モノノミエカタ ガ カワル」①
ダレかと出会って、ナニかと出会って、アルことを耳にしたり、目(マ)の当たりにしたり、さらには、アンナことをやってみたり、やらかしてしまったり、しているうちに、少し、今までとはモノの見え方が変わってくる、違ってくる、みたいなことってないですか、と、Aくんに尋ねてみる。
間髪入れず、Aくん。
「あるだろう、それは、間違いなく、ある」
負けじと、間髪入れず、私。
「あるでしょう、ありますよね、そういうことって」
一気にホッとする。
「見えなかったモノが、見逃していたものが、見えてくるって感じ、もちろん、悪いことじゃ、ない」
さらにホッとする。
「教育の原点のような気もする。学ぶ、とは、まさに、そういうことだろう」
何気なくAくんに尋ねたことが、ドーンと肯定されたものだから、ホッと、どころか、嬉しくて、心の内側までジンワリと熱くなる。
「ただし、・・・」
「えっ」
「ただし、モノの見え方が変わることのそのベクトルは、必ずしも、同じ方向を向いてはいないんだな」
そもそも、ベクトルの意味さえ、よくわかってはいないのだ。Aくんが言わんとすることのそのあたり、ほんの数秒前まで、あれほど晴れ渡り、視界もスッキリとしていたのに、猛スピードで、またまた深い霧が立ち込め始める。(つづく)