はしご酒(4軒目) その百と百と三十九
「ダレモガ ニノアシヲフム」②
「旨いものは旨い。いったん、その旨さを知ってしまうと、そう簡単にはソコから足を洗うことなどできやしない。たとえ、その旨さの背後に隠れていた毒に、気付いたとしてもだ」
「毒に気付いても、ですか」
「そう。そして、皆で寄ってたかって食べ続けてきた」
聞けば聞くほど、恐ろしくなってくる。
「その結果、生み落とされた、誰もが二の足を踏む負の副産物は、その副産物の処理は、誰かにお願いしなければならない」
聞けば聞くほど、さらに一層、ズズンと重くなる。
「さ、どうする。どうお願いする。ソコだよ、僕が気になっているのは」
誰もが二の足を踏む、そんな負の副産物の尻拭いを、誰かにお願いしなければならない、という、この、ゴマカしようのない現実が、あまりにも重たいものだから、ナニをどう考え、そして、どう答えていいのかも、全くわからないまま私は、沈黙してしまう。
「そんな僕が、ナニよりも危惧しているのは、誰かにお願いするそのときに、悪魔の手法である、あの、人の弱味に付け込んで、が、用いられているのではないか、という、まさにソコなんだ」
仮に、誰もが二の足を踏むことを、お願いしなければならない、そのときに、Aくんが言うような、「人の弱味に付け込んで」、などということが、本当に、まかり通っているとするならば、それは、とてつもなく恐ろしいことである。
「ソレが、個人レベルであったとしても、充分に恐ろしいことなのに、ましてや、ソレが、国家レベルで行われているとしたら、と、考えてみてごらんよ。いかなる理由があろうとも、あってはいけないコトは、あってはいけない、ということだ」
(つづく)