ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.492

はしご酒(4軒目) その百と百と三十三

「ビビル ビビラー シンドローム」②

 より、わかりやすくするために、ネット社会風居酒屋社会、という、バーチャルシチュエーションで説明してみよう、とAくん。

 「まず、入店時には、仮面を被ることが義務付けられる。面が割れてはマズイからな。客席数が数億席規模の超大箱店。ターゲットになる個人名は、遠慮することなく出しまくる。備え付けの音声変換機能付きウルトラ拡声器で、文句やら批判やらを言いまくる、しまくる。みたいな、そんなイメージが、ネット社会だ。どうだい、わかりやすいだろう」

 わかりやすいような、わかりにくいような、そんな感じだが、Aくんが言いたいことは、なんとなく伝わってはくる。

 「好ましくはないなりに、この際、百歩譲って、どうせなら、そんな仮面など、ポイと投げ捨てて、勇猛果敢な戦国武将のように、や~や~我こそは~、と、己の名を名乗った上で、ウルトラ拡声器を握りしめ、もちろん、音声変換機能はOFFで、あらんかぎりの大声で批判しまくる、ぐらいの気持ちで、ネット社会に身を投じてくれたら、まだ、少しはマシかもしれませんね」、と私。

 と、言ってはみたものの、残念ながら、そんな気持ちでネット社会に身を投じる者など、そうそういるはずもなく、来る日も来る日も、出どころ不明の、ターゲットとなる個人に対するアレやコレやの批判やら文句やらが、無尽蔵に発信され、拡散されていく。

 無論、言うまでもなく、ビビラーたちがビビるものは、ネット社会のソレらに限られているわけではない。巷は、バッシングやらクレームやらハラスメントやら脅迫やらで、イヤというほど溢れかえっている。

 それにゆえに、の、ビビラーシンドローム

 そうした、この、現代社会の闇の、その、象徴的な新種として誕生した、ビビるビビラーたちが、一向に歯止めがかかる気配もなく、ブチュブチュと増殖中であることもまた、どうにもこうにも致し方のないこと、なのかもしれない。(つづく)