はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と四十六
「ヨウカイ カノウセイツブシ!」
「気に食わね~ヤツらを徹底的に潰す、潰しまくる」
えっ!?
「思い通りにならないヤツらを生かしておくわけにはいかね~」
ええっ!?
「我らが正義。我らの考えこそが真っ当。にもかかわらず、そんな我々を、我々の考えを、お前らごときが批判するなんぞ、100年早いわ~、かんら、かんらからから」
えええっ!?
誰かのマネでもしているのか、ヤケに威勢のいい豪快なモノ言いで、かんらからからと語り始めた、Aくん。
「こんなモノ言いをするヤツらと酒を呑み交わそうとは思わんだろ」
「もちろん、微塵も思いません。そのモノ言いって、先ほどの、♪チュ~リツ~ノッチュ~、キミノチュ~、は、実は、中立でもナンでもなくて、身勝手に偏りまくっているにもかかわらず、我こそが政治的公平性なのだと声高に訴える独裁者のモノ言いそのものですよね」
「そんなモノ言いで、モノの考え方で、モノの価値観で、圧倒的な権力を握る権力者が、メディアに、報道に、噛み付き始めたとしたら、おそらく、今のメディアじゃ、報道じゃ、受けて立って噛み付き返す、なんてことはできねえだろうな~」
「できないかも、しれませんね」
それでも、是非、意地でも噛み付き返してほしい。噛み付かれたまま、そのまま屈してしまうなんて、あまりにも惨(ミジ)めだ、惨めすぎる。
「そして、もう一つ。それにもましてトンでもなく罪深い悲劇、ソレは、この手の権力者が、あたかも、あの、あらゆる罪なきピーポーたちの、その可能性を喰い散らかすことだけに生き甲斐を見出だす妖怪「カノウセイツブシ」に取り憑かれたように、気に食わないヤツらを潰しまくる。と、いうことだ」
う、うわっ。
「そして、この国の、この星の、未来を担う多様な可能性に満ち満ちた人材たちをも潰す、潰しまくる。コレほどの悲劇は、そうあるもんじゃ、ない」
た、たしかに。
たとえば、あの、ジェンダー、ジェンダー不平等問題一つとってみても、未だ、根本のトコロはナニ一つ、良い方向に変わってなんかいない。
妖怪カノウセイツブシに取り憑かれたあの人たちは、いったい、いつまで、そんな、旧態依然とした価値観のままで突き進むつもりなのだろう。
Aくんが言うように、そうした世の中の無理解の中で、差別の中で、多くの可能性が、多くの可能性に満ち満ちたピーポーたちが、絶望という沼に引き摺り込まれるように潰され続けてきたのかも。そして、これからも、潰され続けていくのかもしれない。
ドコからドウ考えても、コレほど罪深い悲劇は、ない。
(つづく)