ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.485

はしご酒(4軒目) その百と百と二十六

「ブンメイノリキ ノ ギャクシュウ」

 豊かさと安定と利便性と安価を目指して、数多くの文明の利器が、この世に誕生してきた。

 考えようによっては、この星の歴史は、文明の利器を、あれこれ模索し続けてきた歴史である、と言っても過言ではないような気さえする。

 豊かさも、安定も、利便性も、安価も、諸手を挙げて喜んでいい、と、普通、誰しもが思う。そんなものはダメだろ、とは、まず言わないし、言えない。そして、言えないまま、この、今、まで、ほぼ躊躇することなく突き進んできたのである。

 ところが、案の定、いよいよ、そうした文明の利器たちの逆襲が、そこかしこで始まり出した、とAくん。

 でも、実のところは、かなり以前から、権力者には人気のない専門家たちの間で、警鐘は鳴らされていたことなのだけれど、世界の経済を軽んじる世迷いごと、と、一蹴(イッシュウ)され続けてきたのだ、という。

 「文明の利器たちの逆襲、ですか」

 「そう。人間に例えてみると、わかりやすいかな」

 「人間に、ですか」

 「そう。高カロリーの美味いものばかりを食べ続けて、やれ肥満、やれ高血圧、やれ脂肪肝、やれ糖尿、などなどと、エライことになってからでは、もう遅い、みたいなその感じと、酷似している、とは、思わないかい」

 なるほど、わかりやすい。

 迫り来る文明の利器の逆襲、今、ヒタヒタと、その足音が聞こえる。(つづく)