ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.479

はしご酒(4軒目) その百と百と二十

「アイシュウ ノ ペンフレンド モノガタリ」①

 「ペンフレンド、懐かしい響きだろう」、とAくん。

 まるで、ピンとこない。

 「学研の科学と学習の文通コーナー、知らないかい」、とAくん。

 全く、知らない。

 「読書の好きな人と、と、書かれたそのあとに、たしか、三人ほど、名前が並んでいた」

 「その三人の中から、というわけですね」

 「そう、そう。文通をキッカケにして、読書が好きになればいいかな、とか、読書好きの女の子に悪い子はいない、とか、名前がステキだな、とか、そんな、コチラ都合の勝手なことばかり考えて、その三人の中から一人選んで、思い切って手紙を出したわけさ」

 「で、返事が来た」

 「そう、そう。嬉しかったな~」

 当時、まだ小学生であったAくんは、今では考えられないほど、ウブで照れ屋さん、で、あったらしく、待望のその返事がやって来るまで、結構、ドキドキでワクワクの日々を送っていたようである。

 「封を開けると、中から、キラキラッとしたものが、パ~ッと弾け飛び出してくるような、その感じ、わかるかな~」

 申し訳ないけれど、ホントに、さっぱり、わからない。

 「で、読書は、好きになったのですか」

 「なった、なった。少なくとも月に一冊は読むようになった。感想を交換したりして楽しかったな」

 「まさに、ペンフレンドパワーの賜物(タマモノ)。それって、スゴイことですよね」

 「その通り、スゴイことだ。いいキッカケを与えてくれた。今でも感謝しているよ」

 ピンとこないなりに、さっぱりわからないなりに、なんとなく羨ましく思えてくるから、不思議だ。

 「そういう関係が、何才になっても、お互いが年老いても、ズ~っと続けられたら、さらにスゴイし、素晴らしいことですよね。ついに、二人合わせて5000冊目に突入、とか」

 一瞬、Aくんの表情が曇る。 

 「きっと、この僕の、ダメさ加減のせいだと思う」

 これ以上ないというぐらいの重たさで、Aくんの口元からボタリと溢れ落ちる。(つづく)