ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.453

はしご酒(4軒目) その百と九十四

「ナニカガデキル ナニモデキナイ カモ」②

 先ほどから目の前に、デンと置かれている一升瓶。奈良北部の純米酒とのこと。悲しいかな、増えつつある遊休農地、その遊休農地を、どうにか活用して、育てられた食用米、ヒノヒカリ。そんなヒノヒカリから、生まれた、その、酒は、地方が抱える問題の重たさを、全く感じさせない、実に爽やかでスッキリとした印象だ。

 その、爽やかさのおかげなのかもしれない。なんとなく、一つの答えのようなものが、おぼろげながら浮かんできたものだから、勇気を出してAくんに、告げてみる。

 「たとえば、不買運動、コレならば、その気になれば誰にだってできる。made in その国、の、モノは買わない」

 「ほ~、なるほど、いいね」

 「でも」

 「でも?」

 勇気を出して言ってはみたものの、そのシリから、そのマイナス面が、ブクブクと浮上してくる。

 「その国の一般ピーポーに、真っ先に、しわ寄せがいくかもしれない」

 「ん~、・・・、いくかもしれないな」

 一般ピーポーに罪はない。仮に、罪があるとするならば、おそらくは、一般ピーポーが育ってきた、その環境であり、その教育であるはずだ。我々は、ソコのところを勘違いしてはいけない。

 そんな罪なき一般ピーポーに、しわ寄せがいくなどということは、意地でも避けなければならないし、ましてや、そのことがきっかけで、国境を越えて、弱者である一般ピーポー同士が啀(イガ)み合う、というような愚かなことは、絶対にあってはならないのである。

 「またまた、徹回させてもらいます。やっぱり、ハードルが高い、高すぎる」

 「排除も分断も、どちらも必ず、恨みや憎しみを生み落とすからな~」

 完全に、頭の中の生コン(ピユーター)が凍てついて、その動きが止まってしまう。

 「ナニもできないのかもしれないな」

 「えっ」

 Aくんの、その、唐突に発せられた、あまりに弱気な言葉に、一瞬、耳を疑う。

 「ナニもできないかも」

 もう一度繰り返されたその言葉は、それ自身のその重さに耐え切れず、ボトリと落ちて、床にめり込む。

 その、床にめり込んだ言葉を、拾おうとすることもなく、しばらくの間、私は、ジッと眺めたまま、いる。(つづく)