ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.611

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五十二

セカンドレイプシンドローム」②

 そんなAくんの、「なぜ、セカンドレイプな沼に身を投じてしまうのか」論に耳を傾けているうちに、自分自身を振り返ってみても、時としてその沼に、ズッポリと足を踏み入れてしまいそうな、そんなことがあるように思えてきて、ズンと気持ちまでが重く沈んでいきそうになる。

 こんな、情けないコレは、一対全体この心の中のナニが、その要因となっているのだろう。

 「なぜ人は、圧倒的な被害者に対して、その真実についてナニも知らないにもかかわらず、その真実を知ろうともせず、知りたくもなく、いとも簡単に、その責任の一端を担わそうとするのでしょう」、と私。

 「なぜなんだろうな~・・・」、と、スッカリお手上げ状態のAくんは、一時(いっとき)、沈黙の闇の中を彷徨っているように見えたが、どうにかこうにかソコから抜け出して、ポソリと口を開く。

 「弱者への差別、差別しやすき者への差別、そんな、意地の悪い、姑息で陰湿な差別の心が、悲しいかな、誰しものコノあたりに、多い少ないの差こそあれ、ベッチャリとへばり付いているからなのかもしれないな」

 「コノあたりに、ですか」

 Aくんと同じように、胸のあたりに手を当ててみる。

 そうかもしれない。

 私を含む一般ピーポーのみならず、大いなる責任も影響力もある立場なのにもかかわらず、政治やら経済やらを司ったり握ったりする、一部のエライ関係者たちの発言などにも、未だ、そうした圧倒的な弱者への、差別の心が見受けられたりするものだから、あらためて、人間というものの、その、掴み切れない、得体の知れない、そのナゾの、その闇をズズンと感じてしまう。どころか、その、とてつもなくダークな闇の深みにまで沈み込んで、ゲボッと嘔吐してしまいそうだ。(つづく)