ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.391

はしご酒(4軒目) その百と四十二

「トラワレ カラノ カイホウ」④

 ナニかに憤(イキドオ)る。

 ナニかに妬(ネタ)み嫉(ソネ)む。

 ナニかに怯(オビ)える。

 ナニかに深く落ち込(フカクオチコ)む。

 得体の知れないモンスターによる得体の知れないナニか。私たちは、知らず知らずのうちに、その得体の知れないナニかの囚われ人となり、心を乱し、場合によっては、自分自身を見事なまでに見失う、というこの世のサガを、Aくんは、般若心経の中に見ているのかもしれない。

 毎朝、何気なく聞いていた祖母の呪文に、それほどまでの深い意味があったとは、おそらく、お釈迦(シャカ)さまでもご存じあるまい。

 ん?

 元々は、お釈迦さまの経典なんだから、ご存じあるまい、なわけはなく、やっぱり、さすが、お釈迦さまだな~、などと、大した意味もなく感心したりしているうちに、その祖母が、生前、なぜかよく歌っていた春日八郎の名曲が、どういうわけか、古びた私の脳ミソの奥の奥から聴こえてきたりしたものだから、またまたまたまた驚いてしまう。

 ♪生きていたとは お釈迦さまでも 知らぬ仏の お富さん~ エ~サオ~ 玄治店(ゲン~ヤ~ダ~ナ~)

(つづく)