はしご酒(4軒目) その百と三十六
「イノチ ト タマシイ」②
何度かグビリを繰り返しつつ、自分なりに、アレやコレやと真剣に考えてはみたものの、輪郭がボンヤリとしたものが、ポポポポポとストロボのように現れては消えていくだけで、結局のところ、私の頭の中にはナニも残らず、というそんな情けない感じに、少々落ち込む。
魂とはナニか。
と、Aくんが再びユルリと口を開く。
「魂とは、ですか」
「そう、魂とは、だな」
命、と、魂、とが、ほとんど空っぽの頭の中を、ユラユラと漂い始める。
「己の命のために、己の魂を失ってはダメだ、ということが、キーワードであるように思えてならないんだな、僕は」
人が人であるための「魂」が、ソコにあってこその「命」なんだ、ということなのだろうけれど、なんとなく理解はできる、理解はできるが、難しい、難しすぎる。
「少しピントが外れるかもしれませんが、たとえば、己の命を、もしくは、とくに家族の命を、守るためであるならば、ソレが、たとえば排他的で自己中心的な手段であったとしても、その手段を選ぶこともまた良し、としか、今の私には思えない気がするんです」
ウソ偽りのない率直な気持ちを、できる限り穏やかに、慇懃(インギン)に、Aくんに伝えてみる。(つづく)