ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.385

はしご酒(4軒目) その百と三十六

「イノチ ト タマシイ」②

 何度かグビリを繰り返しつつ、自分なりに、アレやコレやと真剣に考えてはみたものの、輪郭がボンヤリとしたものが、ポポポポポとストロボのように現れては消えていくだけで、結局のところ、私の頭の中にはナニも残らず、というそんな情けない感じに、少々落ち込む。

 魂とはナニか。

と、Aくんが再びユルリと口を開く。

 「魂とは、ですか」

 「そう、魂とは、だな」

 命、と、魂、とが、ほとんど空っぽの頭の中を、ユラユラと漂い始める。

 「己の命のために、己の魂を失ってはダメだ、ということが、キーワードであるように思えてならないんだな、僕は」

 人が人であるための「魂」が、ソコにあってこその「命」なんだ、ということなのだろうけれど、なんとなく理解はできる、理解はできるが、難しい、難しすぎる。

 「少しピントが外れるかもしれませんが、たとえば、己の命を、もしくは、とくに家族の命を、守るためであるならば、ソレが、たとえば排他的で自己中心的な手段であったとしても、その手段を選ぶこともまた良し、としか、今の私には思えない気がするんです」

 ウソ偽りのない率直な気持ちを、できる限り穏やかに、慇懃(インギン)に、Aくんに伝えてみる。(つづく)