ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.361

はしご酒(4軒目) その百と十二

「ズレズレズレ」

 たとえば、「これで充分だ」という、圧倒的に強い立場のピーポーの声がある。でも、現地や現場の弱いピーポーの声とは、なぜか微妙にズレがあり、大事だと思えるようなトコロに限って、尚のこと異なっていたりする。おそらく、こんなことは、この国の、この星の、そこかしこであるのだろうな、と、ボソリと呟いたAくんの、その言葉の真意を掴みきれないまま、しばらく、もう少し黙ったままでいる。

 立場が違うわけだから、力を入れるそのポイントも違ってくるのだろう、とは思うのだけれど、現地や現場のことを知り尽くしている現地や現場のピーポーのその声に、耳を傾けることを怠ることは、やっぱり、どこをどう考えても罪だと思う、と、Aくんは静かにユルリと語り続ける。

 たとえば、「復興」。

 ズレる余地などないように思えるこのワードでさえも、その両者の間には、ズレてはいけないズレのようなものがあるように、思えてならない、という。

 突然、私の中に、フッと湧き上がる。

 そのズレは、どこから生まれてくるのだろうか。

 そのズレは、矯正されることなどありえないのだろうか。

 そのズレは、ナニかトンでもない致命的なコトに繋がりはしないのだろうか。

 結局、私は、そうした次から次へと湧き上がる疑問を、どういうわけかナニ一つ口に出すことなく、黙りこくったまま、少し温(ヌル)くなった生タイプの濁りを、すすり込む。(つづく)