はしご酒(4軒目) その百と十三
「ネムッテイルジカン」①
そんなこと、絶対にできるわけないような、トンでもなくスゴいことを、易々と、しかもカッコよくやっている、みたいな、そんな夢を見たりすること、ある?、とAくん。
えっ、・・・、いつもの如く、少々困惑気味の私。
「せっかく、起きている時間と眠っている時間があるわけだから、起きている時間がママならないのなら、せめて、眠っている時間ぐらいは、心置きなく好きなように楽しい時間を過ごせればいいんじゃないかな~、なんて思ったりするわけ」
なるほど、・・・、いつもの如く、すぐに納得してしまう私。
「なんだけれど、残念ながら、そんなご機嫌な夢なんて、そうそう見ることもなく・・・、で、ちょっと聞いてみたわけ」
「そういえば、一度、ブワ~ッとアルトサックスを、夢の中で吹きまくったことがあります」
「お~、いいね~」
「共演していたコルトレーンに対して、ソコのところ、もうちょっとどうにかならないかな~、などと、上から目線でダメ出ししたりして」
「スゴいな、それ」
「スゴいでしょ」
「夢の中では、その人の本性が、ゴマカシなしでそのまま出ちゃう、って言うからな~」
「えっ」
誉められているのか、それとも、私の人となりが責められているのか、そのあたりがよくわからないまま、もう少し、Aくんの「眠っている時間」噺に、耳を傾けてみる。(つづく)