はしご酒(Aくんのアトリエ) その六十六
「エークン ユメヲミル ユメヲカタル」④
ナニも考えずにタラリタラリと、人の流れに身を任せて歩いていると、大きな川が見えてくる。こんなところにこんな大きな川があったなんて知らなかったな、と、少し驚くAくん。驚きつつも、さらに川沿いの道を何気にタラリタラリと歩いていく。すると、古びた木製の立て看板が目に入る。
おおおおっ。
あらたなる展開の予感。
「なになに・・・、あなたのスカイフレンド、水上機セスナ?、ピンチはチャンス、愛の仕事人、大空のスピードキング?。キャッチコピーもなんとなく古めかしい。かなり近付くまで、プレハブ小屋の影になって見えなかった、その、愛の仕事人なる小振りのスピードキングが、今か今かとその出番を静かに待つようにして水上にプカリプカリと浮かんでいる」
おおおおおっ。
そして、どこまでも不気味で怪しい老人が、「旦那~、乗っていかれませんかい?」、と、しゃがれた声で話し掛けてきたりするんだろうな。
「乗られます?、と、想定外の可愛い声がAくんの耳に飛び込んでくる。ビックリしてソチラの方に目をやると、ほとんど女子高生ぐらいにしか見えないキュートな娘さんが、ソコに立っていたものだから、さらに驚いてしまう。パキパキと角張った『スピードキング』というショッキングピンク色のロゴが派手にプリントされた銀色のジャンパー、が、ヤケに眩しい」
んっ?
キュートな娘さん、とは。読み手の、聞き手の、私の、推測を意図的に絶妙に外してくる肩透かし手法か。でも、私のワクワク感は、そんな肩透かしごときに怯むことなく、アツアツだ。(つづく)