ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.624

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六十五

「エークン ユメヲミル ユメヲカタル」③

 「ナニやらザワついている。人も妙に多い。アナウンスが流れる。人身事故らしい。人身事故?、俺のことか?、違うだろ。鼻血程度のことで、こんな大騒ぎになるはずがない。誰のことだ?、まさか、あの、俺を殴ったヤツか、ヤツが?、天罰か?、天罰だな、天罰にちがいない、などと、アレやコレやとかなりダークな想像をしたりしながら、増える一方の人人人に押されるようにして改札口まで辿り着く。駅員が振替輸送のチケットみたいなものを説明しながら配っている。かなりのイケメンである。そのイケメンが、まだまだ復旧に時間がかかりそうでございます、まことに申し訳ございません、30分ほど歩いていただかないといけないのですが、そちらの駅で乗車していただけますので、などなどと、あまりにも腰が低く、そして丁重で丁寧なものだから、逆にコチラのほうが恐縮してしまう。当たり前のことながら、その駅員にはナンの落ち度もないのである」

 とりあえず、文句を言っておかないと損、みたいな人、時々見掛けたりする。少なくともAくんは、そういうタイプではなさそうだ。

 それにしても、自宅にいるAくんが、なぜ、このAくんの行動を俯瞰して見ているかのごとくに語ることができるのだろうか。Aくんの夢であるはずなのに、これでは、もう一人のAくんの夢になってしまうじゃないか、などなどなどと・・・ん~、やっぱりヤヤこしくなってきたな。Aくんが二人いるのだから、どうしたってヤヤこしくなる。(つづく)