ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.348

はしご酒(4軒目) その九十九

「カイキ ミナ オナジコトヲイウ」

 ナンでもカンでも「パワハラ」と宣うことには、いささか違和感がある。ナンでもカンでも手当たり次第に宣ってしまうことで、本当に許されない「極悪パワハラ」の輪郭が、ボヤけてしまう危険性を、漠然とながら感じているからである。

 そして、そんなヤヤこしいパワハラワールドのその隣で、もう一つ、ヤヤこしい問題が鎮座していたりするものだから、そのヤヤこしさは、さらなるヤヤこしさを生んでいるような気がしてならない。

 それが、Aくん命名の「怪奇、皆、同じことを言う」現象、なのである。

 たとえば、ここに、研修に研修を、研鑽に研鑽を、しっかりと積んだ学校があるとしよう。あらゆるケースを想定したその対応マニュアルも、完璧に先生たちの間で共有されている。

 そんな学校で、ある生徒が、ある先生に、あることを尋ねる。残念ながら、いまひとつ納得できなかったので、別の先生に、そして、さらにまた、別の先生に、ということを何度か繰り返したあと、その生徒が、こう呟く。

 「皆、同じことを言う」

 Aくんは、仮に、万が一にもそんなことがあったとしたら、もうそれは、学校教育の終焉を意味する、と、少し声を荒げる。

 皆が同じことを言う、ということが、ナニかトンでもないことが学校現場で行われていたとしても、皆が同じ態度をとる、ということに繋がるのではないのか、と、Aくんは、心底、心配しているようだ。

 本当に許されない極悪パワハラは、そんな「皆、同じことを言う」や「皆、同じ態度をとる」、といったものたちの頭上で、今日も、安心して余裕をかましながら、ドッカと腰を据えて鎮座している、かもしれない。(つづく)