ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.321

はしご酒(4軒目) その七十二

「ワン!」

 僕は、この「ワン」に、それほどいい印象をもっていない、とAくん。

 「こ、この、ワ、ワン、ですか」、と、それなりに唐突感慣れしているとはいえ、またまた、少々驚き気味の私。

 「そう、ワン。ワンなんとか、とか、ワンなんちゃら、とか、と、すこぶる耳に心地よいだけに、上手い具合にソコに乗っかって、管理することの、統制をとることの、好都合な手法の一つとして、巧みに使われているのではないのか、という危惧を、どうしても僕は払拭できない」、とAくん。

 多種多様な個性が、お互いを尊重し、認め、さらには、相乗効果で高め合う、そんなイメージで、それぞれの個性を、能力を、結集して、巨大な壁を突き破る、という「ワンなんちゃら」ならば、おそらくAくんも、そのように、ネガティブなことを宣うことはなかったと思う。事実、そういう最良のケースが、あるスポーツ界にあったものだから、一気に爽やかな新風として、世間にも受け入れられたのだろう。言い換えれば、それぐらい稀有なケースということなのだ。

 だがしかし、権力を握るシモジモじゃないエライピーポーたちが、仮に、シモジモであるエラクナイ一般ピーポーたちに、突然、とても爽やかな感じで「ワンなんちゃら」などと宣い出したとしても、ソコにナニやら底知れぬ気持ち悪さしか感じない。この感じは、おそらく、Aくんに限ったことではないような気がする。

 「たとえばワンカラー。そのように、一般ピーポーを、ワンカラーに染めることで、この星が、更に一層素晴らしい星になるのだ。などということは、絶体にあり得ない。あってたまるか」、というAくんのトドメの雄叫びに、今回も微力ながら、清き一票を投じたいと思う。(つづく)