ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.322

はしご酒(4軒目) その七十三

「サカノボル!」

 なぜ、そうなったのか。

 そのことを検証する、究明する、もしくは、検証する、究明するその力を、その精神を、育むためには、「遡(サカノボ)る」ことが大事だ、とAくん。

 「巷を賑わしている、遡れないようにするための公文書廃棄、など、言語道断だということですね」、と、少し飛躍しすぎ気味に、私。

 「いいコト言うね~。そう、その通り。遡ることを放棄してしまったら、この国の、この星の、健全な未来など、絶体にあり得ない!」、と、かなり勇ましいAくん。

 Aくんには、社会科の、とくに歴史の授業における一つの提案がある、という。

 それは、現代からスタートして、時の流れを遡っていく歴史の授業である、らしい。

 なぜ、そうなったのか。

 なぜ、その道を選んだのか。

 現代から過去へと時計の針を巻き戻していく中で、その「なぜ」を解き明かしていくことによって見えてくるモノが、必ずあるはずだ、というのがAくんの考えだ。

 古代史に力を入れすぎてしまい、結果として現代史を軽んじることになっているように感じられる、この国の、歴史の授業の現状打破の、切り札になるかもしれない、と、思わしてくれる、そんな期待大の提案であるような気が、目一杯する。

 もちろん、その提案にも、清き一票を投じておきたい。(つづく)