ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.318

はしご酒(4軒目) その六十九

「スーパートータラー イズコニ」③

 「たとえ前途多難であったとしても、その方向性だけは、そうであってほしいんだよな」、とAくん。

 「ヨコ軸もタテ軸も丸ごとひっくるめて、で、あってほしい、ということですよね」、と私。

 「そう、そうでないと、この星は、ホントにギブアップしてしまいそうな、そんな気がするわけよ」、と、なんとなく弱気に見えるAくんに、プチなジャブ程度にパンチを見舞ってみる。

 「でも、たかだか人間ごときに、この星を、グルッと丸ごと考えてみる、などという芸当が、本当にできるのだろうか、そんなことできっこないんじゃないのか、としか、私には、どうしても思えない」

 きっと、少々弱気とはいえAくんのことだから、カウンター気味にパンチを打ち返してくるのだろうと、一応それなりに構えていたのだけれど、一向にその気配もなく、しばらくの間、どことなく澱(ヨド)んだ沈黙が続く。

 すると徐(オモムロ)に、グラスに少しだけ残っていた米焼酎をグビリと呑み干したAくん、その沈黙の扉をユルリと開き、力強く語り出す。

 「そうは言っても、やっぱり僕は信じたい。たしかにこの今は、リスクもナニもカも、ちょっと横に置いておいて、『パートパートのその一点だけをとりあえず突破』派の天下のようではあるけれど、近い将来、『ヨコ軸もタテ軸も丸ごとひっくるめた広範囲のトータル』派が台頭する、そのときが、必ずやってくるはずだ。そして、この世の隅から隅までを、過去から未来までを、トータルに考え、行動できる、スーパートータラーが、降臨するに違いない」

 なるほど、スーパートータラーか~・・・。 

 そんな夢物語のヒーローみたいなもの、何処(イズコ)に、などと冷ややかに思ってしまいがちな私だけれど、Aくんのその熱き語りを、思いを、聞くにつけ、ジワジワと、ひょっとすると、旧態依然としたヤヤこしいシモジモじゃないエライ人たちが立ち去ったそのあとに、新しい正義と愛の風が、シッカリと力強く吹いてきそうな、そんな予感も、ドンドンとしてくるから不思議だ。(つづく)