ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.290

はしご酒(4軒目) その四十一

「ドウデモイイヨウナコトダケド ソンナカンジ ノ シュガーベイビーラブ!」①

 おそらく呑み足らないのだろう、今宵のAくんは、まだまだそんな感じの、発展途上Aくんである。

 そんな感じの、そんなAくん、が、「どうでもいいようなことだけど」、と、前置きしながら語り始めたそのコトは、たしかにどうでもいいようなコトなのかもしれないけれど、なんとなく、ちょっといい話の予感がする、そんな感じの、♪シュガーベイビーラブ、で、あったのである。

 「ザ・ルベッツの、♪シュガーベイビーラブ、ご存じ?」

 そのAくんの言葉に、完全に忘却の彼方のそのまた向こう側にまで飛んで行ってしまっていたあるコトが、突然、鮮明に蘇る。

 当時、小学生であった私は、安物ではあったものの、オープンリールのテープレコーダーを、自慢の宝物のようにして持っていた。ある日の夕方、私は、そのスーパーマシーンの四角い録音マイクロフォンを、ラジオの前にセットする。FM放送から流れるのは、♪シュガーベイビーラブ。息を殺して(家族にも「録音するから静かにしてね~」などと、事前にお願いしつつ)録音し、そのやたらとカン高い雄叫びで始まるその楽曲を、何度も何度も繰り返して聴いては、悦に入っていたのだ。

 「知っています、小学生のときから、メチャクチャ聴いていました」

 「ほ~、小学生が、♪シュガーベイビーラブ、か~、すごいな、それ」

 またまた、想定外の賛辞に、再び、照れ臭くなる私ではあったけれど、♪バッシュワディ バッシュワディワディ・・・という、実にカッコいいバックコーラスが、とにもかくにもホントに大好きであったのである。(つづく)