ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.948

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と七十九

「ミヲキル? イヤイヤ ソンナカンタンニ ミ ナンテ キレナイダロ チガウカイ」

 己の落ち度に自ら鉄拳を食らわすコトの難しさは、周知の事実。そう簡単にできるコトではない。ただし、たとえば、その考え方、行動に、どうしても納得がいかない「甲」に対して、「ソレじゃ~ダメだろ、ソンなコトをしていたら、多くの人たちを不幸にしてしまうかもしれないだろ」と苦言を呈してきた「乙」がいたとしよう。ところが、乙本人も、不徳の致すトコロから、なんと同様の愚行をヤラかしてしまっていたという時、そのことが判明したという時、さ、どうする、ってことなんだよな~、とAくん。

 己の落ち度に鉄拳を食らわす、か~。

 たしかに、簡単にできるコトではなさそうだ。

 「難しいコトだとは思うけれど、とくに責任あるシモジモじゃないエライ人たちは、ソコはやっぱり、自ら、バッサリと身を切る、身を、切らなければならない。そうでなければ、一般ピーポーたちからの信頼を勝ち取ることなんて絶対にできっこないと思うわけよ」

 自ら、バッサリと、身を切る、か~。

 おそらく、巷でよく耳にする、あの、「身を切る改革」の「身を切る」とは、また別種の「身を切る」なのだろうな。なぜなら、本来、「身を切る」は、そんな易々と大安売りできるような簡単なシロモノではないからである。

 「身を切る、身を切る、と、口癖のように宣っているシモジモじゃないピーポー方に、口幅ったいことを言うようで申し訳ないのだけれど、あえて、あえて言わせていただこう。いやいや、そんな簡単に身なんて切れないだろ、違うかい。身を切る、ってのは、究極の自己批判。自分自身をドレだけ鋭く、厳しく見つめられるか、ソレに懸かっている。のだけれど、そんなコトが容易くできる政治関係者が、はたしてドレほどいるんだよ、って話だよな」

 そう熱く語ったあとAくんは、氷の影も形もないただの水みたいになってしまった極薄の芋焼酎を、グビリと呑み干す。(つづく)