はしご酒(4軒目) その四十二
「ドウデモイイヨウナコトダケド ソンナカンジ ノ シュガーベイビーラブ!」②
「上昇コードでグイグイとくる感じ、明るくて前向きで、好きだったな~」、と、懐かしく振り返る私。
「明るくて、前向きか~」、と、なぜか随分と意味深なモノ言いをするAくん。
ひょっとしたら、ぜんぜん明るくって前向きな歌詞なんかじゃないのかもしれない。そんな思いが、おもわずブクブクブクと湧き上がってきた私は、すぐさまAくんに、どんな歌詞なんですか、と、尋ねてみる。
さすがに、声に出すのは恥ずかしいのか、どこからか、またまたシワクチャあがりの(先ほどよりは少し大きめの)紙切れを取り出して、そこにその歌詞の和訳をタラタラタラと書きなぐり、私の目の前までスルリと滑らせる。
愛しい君よ
可愛い君を
ブルーにさせるつもりはなかったよ
愛する君よ
可愛い君を
傷つけるつもりはなかったんだよ
どんな恋人たちでも
間違うことってあるのさ
「とんでもないことをしでかして、シモジモであるエラクナイ一般ピーポーをガッカリさせてしまった権力を握るシモジモじゃないエライ人たちが、自戒の念を込めて、カラオケかなんかで熱唱すればいいんじゃないか、って、思うんだよな~、僕は。歌詞の、少し言い訳っぽいところも、なんとなくドンピシャリな気がするし。ま、どうでもいいようなことだけど」
そんな感じの私の予感は、見事なまでに的中し、Aくんのその話は、やっぱり、ちょっといい話であったのである。(つづく)