はしご酒(3軒目) その六十三
「ミョウリ ニ ツキル」
「冥利(ミョウリ)に尽きる」、という言葉がある。
この「冥利」、単純に直訳すると、「冥土(メイド)からの御利益」ということにでもなるのだろうか。
「教育は柔(ジュウ)のチカラなり」理論、を、熱く語り、少々悦に入るZ’さんに、思い切って聞いてみる。
「先生冥利に尽きる、なんて、いまどきの先生は、そんな古臭いこと、思わないですよね~」
唐突な問いかけにもかかわらず、躊躇することなく、「もちろん、思うでしょ」、と即答するZ’さん。
そうでない先生もいるかとは思うけれど、そうでない先生ばかりにスポットを当てて、教育を語る、先生たちを語る、というそんな世間の風潮に、「それではダメだろ」と、珍しく、ほんの少しだけ恐いZ’さん、である。
いかなる職業も、この「冥利に尽きる」という、その一瞬のおかげで、ガンバれてこれているのではないか、という思いが、私にはある。
たしかに、辛いことも、苦しいことも、「やってられね~よ~、やめてやる~」などということも、あるとは思うけれど、それでも、この胸の奥のほうが、ジンジンと熱くなる、そんな瞬間が、たまに、あったりするものだから、明日に向けて、どうにかこうにか、ファイトが湧いてくるような、そんな気がするのだ。(つづく)