ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.198

はしご酒(3軒目) その二十七

「ハシリ!」②

 そのわからなさを全身から放出していた私に、さらにZさんは、「着物の世界は走りの世界、ちょっと先取りのおしゃれが、粋、なのよね~」、と続ける。

 「ハシリ?、イキ?」

 「そう、走り、が、粋。着物と季節感は、切っても切れない間柄、その季節感、季節の移ろい、を、着物を通して楽しむ、これこそが、着物の醍醐味と言い切っていいと思う」

 「で、ハシリなんですか?」

 「走(ハシ)り、盛(サカ)り、名残(ナゴ)り、の、走り、ね」

 「なんとなく、は、わかりますけど」

 「なんとなく、で、いいのよ」

 なるほど、ようするに、ちょっと先取りの、ハシリの焼き栗、もまた、イキだね~、と、いうことなのであろう。

 この「イキ」、なんとなくながら、も、侮れないな、ということぐらいは、私でも、わかる。そして、そんな「イキ」を、力むことなく感じ取れる自分でありたいと思うし、さりげなく生活の中に織り込んでいける自分でありたいとも、思う。(つづく)