ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.546

はしご酒(4軒目) その百と百と八十七

「フキヨセモンモウ イトウツクシ」(アノ ゼットサン)

 晩秋。とりわけ、お気に入りの季節なの、と、あのZさんが宣っていたことを、ふと思い出す。

 冷えた地面にハラハラと、ポトリポトリと落ちた葉やら木の実やらに、冷たい風が吹く。すると、それらは、ガサガサと転がって、ザワザワと束になる。ふと目をやると、その、実にカラフルな色やら形やらが幾重にも折り重なって、まさに万華鏡かと見紛(マガ)うほど、という。

 

 吹き寄せ文様、いとうつくし

 

 着物愛溢れるZさんが、何気に放ったその言葉もまた、忘れられないままでいる。

 この国の古(イニシエ)からの美意識によって、晩秋の彩(イロド)りがギュッと凝縮されたような文様なのだろうな、と、勝手に妄想してみたりしていた。

 するとZさん、「吹き寄せ、は、富み、の、富、に、貴乃花、の、貴、で、富貴寄せ、とも言われていて、縁起のいい吉祥文様でもあるのよね」、と。

 この国の文化は、ホントに、なんてステキなのだろう、と、あらためて思ったほどである。

 そんな、吹き寄せ文様に魅せられたZさんの、トドメの一言も、深く、印象的だった。

 

 この社会も、深き寄せ文様、いとうつくし、であればいいのに

 

 ヤヤもすると、どうしても、個性とか、多様性とか、といったものから、ズルズルと離れていきがちなこの社会だけに、このZさんの言葉もまた、私の五臓六腑に、スルスルと沁み入ってくるのだ。(つづく)