ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.186

はしご酒(3軒目) その十五

「オビジメ ファースト」

 そんな魅惑の「美しい雫」コレクションの中から、地味ながらも通好みな、着物関連部門の筆頭格と言っても過言ではない「帯締め」に注目したい。

 もちろん、Zさん、そんな帯締めを軽んじるはずもなく、「一番最後の仕上げである帯締めこそが、肝心要の〆(シメ)そのもの、なにをチョイスするかで、その人のセンスも問われるわね」と、その語りに再び熱を帯び始める。

 まさに手組みの美、その歴史も遥か飛鳥・奈良時代までさかのぼるらしい。大陸から伝来した組紐が、不屈の職人魂によって進化の道を突き進むわけである。

 Zさんの入門者向けレクチャーを受けてから、もう一度、今宵の帯締めに目をやる。先ほどは、琉球紅型の華やかな帯に目を奪われ、帯締めの存在に気付きさえしなかった、にもかかわらず、俄然、光り輝いて見えてくるから不思議だ。

 たしかに、凄まじい手仕事であり、非常に繊細で、デザイン性の高さにも驚く。

 着付けにおいては、その一連の流れの中の、〆を、ラストを、飾る、帯締めではあるけれど、その存在感は、ラストどころか、「帯締めファースト!」、と、言えそうだ。

 今まで見えなかったモノが、見えづらかったモノが、次から次に見えてくる。ひょっとすると、「学ぶ」とは、そもそもそういうものなのかもしれない。ホントに、心底面白い。(つづく)