はしご酒(3軒目) その十七
「トドメノ オビドメ ハ コイキナ ショウウチュウ」②
ということで、今宵は、帯留めを身に付けてはおられないZさんであったのだけれど、落ち着いた色合いの和モダンな布製のバッグから取り出した、小さな陶器製のブローチのようなものを、そっと私の掌(テノヒラ)に置いた。そのツルリとした表面の向こう側で、ほどよく金箔があしらわれた抽象絵画が静かに光彩を放っていた、ように見えたものだから、結構驚いてしまう。
「陶器製ですか、キレイですね、模様も斬新だし」と私。
「有田焼ね、おそらく。帯留めも、なかなかでしょ」とZさん。
「なかなかどころか、小粋な小宇宙、という感じかな」と私。
「いいわね、その小粋な小宇宙。肝心要の〆の、帯締め、に対しての、トドメの小粋な小宇宙、帯留め、気に入ったわ」と、随分と満足気な様子のZさん。私も妙に嬉しくなる。
また一つ、美しい雫が、この掌にポタリと落ちた、そんな気が、確かにした。(つづく)