はしご酒(3軒目) その十六
「トドメノ オビドメ ハ コイキナ ショウウチュウ」①
「もう一つ、忘れてほしくないものがあるの」、と、さらに調子付いてきたZさん。
そのもう一つとは、私が、人生において、気に留めたことも、話題にしたことも、一切合切ない、「帯留め」というもののことであるらしい。
そう、帯留め。
この帯留め、Zさんの「帯留め愛」溢れる熱き語りに耳を傾けるにつけ、モクモクとそのマニアックな通好み感が立ちのぼる。
だからこその「遊び心」も。
それゆえの「酒落っ気」も。
プルプルと、プルプルと際立ってきたりするものだから、実に興味深い。
なるほど、本来、アクセサリーを身に付けない前提の着物ファッション、の、その世界で、さりげなく佇む凝縮された小さなお洒落ポイント、それが、帯留め、なのか~、などと、フムフムと、フムフムと納得する私。
ただし、残念なことにこの帯留め(だけでなく、帯締めもそうなのだけれど)、単独でのパフォーマンスを信条としていて、帯締めとの仲良しコラボとか、幸せのマリアージュとか、魔のX攻撃とか、伝説のツインシュートとか、といったものは、まず、ないらしい。
でも、全くもって歩み寄ろうとしない、その、一途な独立独歩みたいなところが、それはそれで充分に楽しげだし、好感ももてるし、「どっちもガンバレ!」と、エールを送りたくもなってくる。
ウワ~。
ズンズンと、ズンズンと着物ワールドに引き摺り込まれていく。
(つづく)