ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.187

はしご酒(3軒目) その十六

「トドメノ オビドメ ハ コイキナ ショウウチュウ」①

 「もう一つ、忘れてほしくないものがあるんだけど」、と、一層調子が上がってきたZさん。

 そのもう一つとは、私が、人生において、気に留めたことも、話題にしたことも、一切合切ない、「帯留め」というもの、のことであるらしい。

 さて、この帯留め、Zさんの「帯留め愛」溢れる熱き語りに耳を傾けるにつけ、モクモクとそのマニアックな通好み感が立ちのぼる。そして、さらに、だからこその「遊び心」も、それゆえの「酒落っ気」も、プルプルと際立ってきたものだから、実に興味深い。

 なるほど、本来、アクセサリーを身に付けない前提の着物ファッション、の世界で、さりげなく佇む凝縮された小さなお洒落ポイント、それが、帯留め、なのか~、などと、フムフムと納得する私。

 ただし、残念なことにこの帯留め(だけでなく、帯締めも、そうなんだけれど)、単独でのパフォーマンスを信条としているらしく、帯締めとの仲良しコラボとか、幸せのマリアージュとか、魔のX攻撃とか、伝説のツインシュートとか、といったものは、まずない、らしい。

 でも、お互いに歩み寄ろうとしない一途な独立独歩、みたいなものが、垣間見られて、それはそれで充分に楽しげだし、好感ももてるし、どっちもガンバレ!、という気持ちにも、なる。(つづく)