ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.176

はしご酒(3軒目) その五

「メガミ!」②

 しかしながら、思いを馳せるにも、ナゼか、ほとんどイメージが湧いてこない。すぐさま壁に突き当たる。

 そんな私の目の前に、カラー刷りされたチラシのようなものが、隣からス~っと滑ってきた。と同時に、先ほどオーダーした、北アイルランドウヰスキーにしては珍しく土っぽさが特徴のシングルモルトが、そのチラシを追いかけるようにして静かに着地する。クセは強いがクセになる、そんなキャッチコピーがピッタリの逸品を、ほんの少し口に含み、そのチラシに目を通す。

 「喜如嘉の芭蕉布 人間国宝 平良敏子」と書かれたそのチラシには、コチラを優しく見つめる大写しのお婆さんが、いた。

 なるほど、このお婆さんが、Zさんが尊敬するというあの「女神」なのだな、きっと。などと思いながら、しばらくボンヤリと眺める。すると、その優しそうな瞳の奥から、ジワリジワリと燃える情熱と信念と、底知れぬパワーと、が、フツフツと湧き上がってくるような、そんな気がしたのである。

 ただ者ではない、ということだけは、充分に、ニジニジと伝わってくる。

(つづく)