はしご酒(3軒目) その五
「メガミ!」②
しかしながら、思いを馳せるにも、ほとんどイメージが湧かない。すぐさま壁に突き当たる。
そんな私の目の前に、カラー刷りされたチラシのようなものが、隣からス~っと滑ってきた。と同時に、先ほどオーダーした、北アイルランドのウヰスキーにしては珍しく土っぽさが特徴のシングルモルトが、そのチラシを追いかけるようにして静かに着地する。クセは強いがクセになる、そんなキャッチコピーがピッタリの逸品を、ほんの少し口に含み、そのチラシに目を通す。
「喜如嘉の芭蕉布 人間国宝 平良敏子」と書かれたそのチラシには、コチラを優しく見つめる大写しのお婆さんが、いた。
なるほど、このお婆さんが、Zさんが尊敬するというあの「女神」なのだな、きっと、などと思いながら、しばらくボンヤリと眺める。すると、その優しそうな瞳の奥から、ジワリジワリと燃える情熱と信念と、底知れぬパワーと、が、フツフツと湧き上がってくるような、そんな気がした。
ただ者ではない、ということだけは、充分にニジニジと伝わってくる、のである。(つづく)