ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.382

はしご酒(4軒目) その百と三十三

「オトナ ノ ジジョウ ノ ツミ ノ フカサ ハ カクベツ」

 世の中は、そんなキレイごとの理屈だけでは済まないし、回らないんだよ、と、権力を握れば握るほど、エライ人たちは口を揃えて、同じような熱弁をふるい出す、とAくん。

 どう考えても、それじゃダメだろ、と、なんのシガラミも、リガイも、カケヒキもないシモジモであるエラクナイ一般ピーポーのほとんどが思うことであっても、ところがどっこいそうは問屋が卸さないのが、大人の事情にまみれにまみれたこの世の中なのだ、と、言い切ってもいいかもしれないな、と、語り続けるAくんの、その憤りのボルテージも、ジワリジワリと右肩上がりである。

 たとえば、この星の未来のために、あるコトを絶対にやり遂げなければならないというそのとき、そのためには、目先の、不利益も、損失も、リスクもまたやむなし、と、普通は、そう考える。そうでなければ、絶対にやり遂げることなどできるはずがない、と、この私でも思う。

 ひょっとすると、ハナから、絶対にやり遂げなければならないなどとは思っていない、のかもしれない。おそらく、そのあたりもまた、大人の事情というヤツなのだろう。

 「権力者などというものは、シモジモであるエラクナイ一般ピーポーには、到底、理解などできそうにない大人の事情に、ドップリとまみれにまみれてブレまくり、トドのつまりは、判断が遅れ、判断を誤り、そして、ナンともカンともなことに、という悲しい筋書きが、この世の常なのかもしれないな。大人の事情の罪の深さは、想像以上に、格別、だということだ」

 ジワリジワリと右肩上がりの憤りに、落胆やら失望やら絶望やらまで加わって、その分、体重まで増えてしまったようにさえ見えるAくんが、隣に、ズンと重く鎮座している。(つづく)