はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と十七
「スキナコトシテ メシガクエル」
「贅沢な人生とはナニか」
ん?
「傍(ハタ)から見ていると、正直、『キツそう』としか思えないのだけれど、その人の顔を覗き見れば、なぜか、全くもって『キツそう』じゃない」
んん?
「本人に聞けば、『好きなことですから』と、サラリと言ってのける。その『サラリと』感に、おもわず、悔しいぐらい嫉妬してしまうわけだ」、とAくん。
ん~、好きなことですから、か~。
その、好きなことですから。たしかに、Aくんが言うように、おもわず嫉妬してしまうほどの、魅力的な言葉ではある。
あっ。
「そういえば、ある人がこんなことを言っていました。今までのように、イヤな仕事でも、イヤな組織でも、歯を食いしばって頑張る、頑張り抜く。みたいな、そんな時代ではないような気がする、と」
「つまり、なにかい、イヤな仕事なんかトットとやめてしまおうぜ、ってこと?」
「イヤな仕事をイヤイヤやって結果を出せる、結果が出る、という、そんな時代じゃ、もう既に、ない、という意味みたいです」
「ほ~、なるほど、なるほどね~。つまり、つまりだ、自分の目で見て、肌で感じて、心が突き動かされたこの仕事が好きで好きでたまらない。だから頑張れる。だから結果が出る。みたいな、そういうことなんだろうな」
「だと思います」
「キーワードは、まさに、好きなコトしてメシが食える、だな」
好きなことして飯が食える、か~。
いつのまにか心の病が、これほどまでにそこかしこにニジニジと蔓延りつつあるこの現代社会の中で、お金じゃないんだ、世間体じゃないんだ、出世なんかじゃないんだよ~、と吠える、吠えまくる、そんな社会からはみ出した一匹狼のように、できることなら私も、荒野に飛び出してみたくなる。(つづく)